行動療法

行動療法は一般に「行動(学習)理論に基づいて、問題行動を適応的方向に変容させることを目標としてなされる諸技法の総称」と定義されています。なんだか難しい定義ですが、簡単にいえば、「適応の破綻を引き起こしている行動パターンに対しある一定の理論によりアプローチし、行動を修正し、結果的に破綻に至らないようにする治療法」ということになるでしょう。
例えば「ひとりで電車に乗ると不安発作をおこしてしまう」ため外出に一定の制限を抱えてしまっている人がいたとします。この人の場合、問題となるのは「電車に乗ると不安発作をおこしてしまう」という行動パターンにあります。このパターンを修正するために、「まずは友人と二人で電車に乗ってみる」→「電車に乗らず改札口までひとりで行ってみる」→「電車に乗らずひとりでホームに立ってみる」→「人ごみの少ない時間に一区間だけ電車に乗ってみる」→「人ごみの少ない時間に30分程度の距離をひとりで電車に乗ってみる」→「ひとりで電車に乗っても大丈夫な状態になり、これを繰り返していく」というような段階的目標をクリアーしていく方法を用いたとします。この際の行動理論は「人間には恐怖刺激や不快刺激に対しての慣れが生じる」(消去理論)というものであり、技法としては曝露療法(エクスポージャー法)のひとつである現実刺激による系統的脱感作法が用いられたことになります。

以下に代表的な技法をあげておきます。

機デ露反応法(エクスポージャー法)
エクスポージャーとは「望ましくない反応を引き起こしている刺激状況に、その反応が生じなくなるまでさらすこと」であり、Hullの消去理論を基礎としています。用いられる刺激や、刺激の与え方により下記の分類がなされます。
仝充損彪磴砲茲觀賄的脱感作法(Systematic Desensitization in−vivo Exposure)
現実の不快刺激に直接曝露するが、その方法を段階的に強めていくことで、系統的に脱感作していく方法です。
(上記記載済み)
∩杼による系統的脱感作法(Systematic Desensitization in Imagination)
現実の刺激ではなくイメージの中での刺激を用います。
まず不安場面における不安の強さに5〜10段階の階層をつけます。
次に十分にリラックスした状態でもっとも軽度の不安場面を想像しながら、リラクゼーションを維持できるようします。
徐々に不安場面の強度を上げていきます。
適応は単一恐怖症、心的外傷後ストレス障害などですが、まず十分なリラクゼーション法(筋弛緩法や自律訓練法など)を修得した後に行なう必要があります。
8充損彪磴砲茲襯侫薀奪妊ング法(Flooding in−vivo Exposure)
この方法は、最初から最も強い刺激状況にさらすことを特徴とします。徐々にではなく、急激にであるためリスクも大きいのですが、治療効果が早くまた改善した場合の確実性が増すという点で有用ではあります。
想像によるフラッディングをインプロージョン(Implosion)と呼びますが、これを現実刺激の前段階として行なっておくことも有用です
さ媽眦志向法(Paradoxical Intension)
治したいと思っている症状を、逆に意図的に作らせる方法。例えば「全く眠れない」という人に「一晩中眠らないでおく」という目標を持ってもらったり、強迫症状における確認行為を繰り返し行なうよう指示したりなどの方法があります。

供デ露反応妨害法(Exposure&Prevention)
強迫性障害のページに記載してあります。不快刺激に曝露しつつ、不快刺激を取り除く反応を妨害するという方法です。


掘ス堝斡化法
曝露反応法が「慣れることにより反応を消去していく」のに対し、行動強化法は「プラスの刺激を与えることで行動を変化させていくこと」を目標とします。
.函璽ン・エコノミー法
一定の課題を正しく遂行できたときに、あらかじめ約束した条件に従ってトークンを報酬として与え、目標とする行動(オペラント行動)を強化する技法です。
トークンは一種の代用貨幣で、エコノミーはこれを流通させる制度のことです。
適応対象としては、不登校・習癖などがありますが、あらかじめしっかりした治療契約を結んでおく必要があるため、導入は簡単ではありません。摂食障害の患者さんにトークン・エコノミー法を応用した入院治療を行なっている施設もあります。
▲轡А璽團鵐伊 雰狙化法)
一定の目標行動(標的行動)に至るまでの行動を段階的にスモールステップの形で設定し、順次これを遂行していくことで目標行動に近づこうとする技法です。
内容的には現実刺激による系統的脱感作法に近いものがあります。
例えば不登校の場合に、まずは少しだけ学校にいる(保健室にいるだけでもいい)ことをスモールステップとし、これが達成されれば、次の目標を設定していくなどの方法があります。
トークン・エコノミー法との併用が効果的です。

検ゥ皀妊螢鵐伊
人は自分で経験しなくても、自分以外の人々の行動やその結果を観察することで、新しい行動様式を学習したり、反応パターンを変化させたりすることが可能です。発達障害などの患者さんで、日常生活の変化を期待していく場合の家族の対応や施設内での対応を考える際に重要なものとなります。
また「模倣は悪ではない」という意識を持てば、身近な人の中で理想的と思われる人の行動を観察し、模倣していくという方法での自己強化も可能となります。




その他行動療法には数多くのものがあります。その内容には一部重複したものもあり、日常私たちが当たり前に行なっているものも多く含まれています。治療は特別なものである必要はありません。また、ここに記載したものについては、皆さんが自分自身で取り入れていくことが可能なものもあるはずです。大切なのは、日々の自分自身の行動をある程度客観的に評価できるかどうか、そして良い方向に向かうためのたくさんのアイデアを探していくことです。